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第四話 ないしょのはなし・・ムーンのお庭

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第四話

 

 

ないしょのはなし・・・ムーンのお庭

 

 

郵便屋さんが

まだこない朝はやく。

眠っている間にとどいた

しょうたいじょう。

「ばしょはムーンの

お庭とかいてあるのに、

どうして、こんな夜の、

かってなパーティーチケットが

届いたのかな」

でも、うれしかったのです。

チケットもらって。


でもでも、

ムーンはこどもだから、

夜の七時半は

ちょうど寝る時間です。

いけないの。

 

でもでもでも、

ないしょのチケットだけど、

「このパーティーは

ひみつね」といいながら、

ママに「いっていーい」と

お願いしてみました。

「そうだねー。

とくべつよ。そのかわり、

いつものムーンではだめ。

大人の変装をしていきましょうね」

「だって、コオロギさんは、

変装してもすぐわかると思うよ。

ムーンのお庭なのだから、

顔を知っていると思うよ」

「いいの。せっかくだから、

パーティーメガネとぼうし、

それに

スティックをもっていきましょうね」

ムーンはこまった顔をしたものの、

ほんとうは自分の姿をおもいうかべ、

わくわくしていくのです。

 

そして、いくにちかたち

満月の日がきました。

雨がふらないように、

ふらないように、

そればかり祈っていたのに、

ぱらぱら、ぱらぱらぱら。

朝から雨がふりはじめ、

やみません。

すでに変装し、

はりきっているムーンの眼には

ぽろぽろ、ぽろぽろぽろぽろ。

涙があふれます。

 

 

 

 

雨はやんだかと思うと、灰色の雲がいつまでも、どんとかまえて動こうとしません。

ぱらぱら、ぱらぱら。

また雨がふってきます。

変装したままのムーンは、

ときどき窓辺からお外をながめています。

 

「スティックをふって、

お月さんが顔をみせるように

お願いしてごらん」

ママの声に、変装したまま、

スティックでまんまるいお月さんの

かたちに何度もえがいてみます。

雨はやみそうにありません。

 

もう夕方。

ムーンはつかれてしまい、とうとう、

変装したまま眠ってしまいました。

ママはそのまま、

そーっとベットに寝かせます。

 

ムーンの頭をなでながら、

「よい夢を見ますように」

ママも願いごとをしました。

 

「起きなさい。もうすぐ夜の七時半よ。

おくれるわよ」

ママの声にムーンはあわてて眼を凝らし

お外をみると、まんまるいお月さんが

くっきり顔をだしています。

ちょっとまぶしいくらいに、

あちこちでお星さまも

きらきら光っています。

雨のしずくがお月さんの光を受け、

かすかにきらきらしています。

 

さー、パーティーのはじまりです。

 

ムーンは自分のお庭にきてみると、なにやら、たくさんの虫さんたちは準備がおわり、

パーティーははじまっていました。

いそぎあしのムーンに

「ようこそ」



音楽隊にコオロギさん、スィッチョさん、キリギリスさん。

メロディーに合わせホタルさんは

ぴかぴか光っています。





「まってたよ」

コオロギさんの声が

とてもうれしかったのです。

会場はいい香りの花に

つつまれています。






白いカラスウリに

さまざまな色をまとったオシロイバナが

咲いています。





まんまるお月さん色のオオマチヨイグサ、ムーンの顔くらい大きな白いヨルガオも

咲いています。




「夜の花、ママにプレゼント」

コオロギさんはこれらの花を

束ねてくれました。

ぱっぱっぱっぱっぱっぱっ。

すばやく、

はねを動かしとびまわる、

ちょうちょさんとちょっと

似てるスズメガさんも

ともだちになりました。

夜しか咲かない花、

夜しかいっしょに遊べない

あたらしいおともだち。

何もかも不思議でした。

はじめて聞く夜のメロディーと

光と香りに包まれた

パーティーがつづきます。

曲は三つ四つ、そんなに演奏したわけでもないのに、夜遅く起きたことのない

ムーンは、いつしか、

深い眠りに入ってしまいました。

 

細い真っ白な光がムーンの顔を

一瞬照らしました。

あわてて起き上がると、

ここはベッドの上。

パーティーメガネとマントを

つけたままです。

スティックもまくらもとにあります。

明るく部屋は・・・・。

いや、そんなことはどうでもよいのです。ママの仕事部屋の机には、しぼんだカラスウリの花とヨルガオにオシロイバナが

かびんにさしてあります。

「ほんとだ」

ムーンはゆうべの

不思議なパーティーを思い出し

ドキドキしたままです。

さっそく、確かめるように

お外にでてみました。

「ドロドロだから長靴はいてね」

ママの話は半分きき、

外へ飛びだしました。

ムーンのお庭には花は咲いていません。

ぽたぽたぽた。

葉っぱには、こぼれんばかりに水玉がついたままです。水玉のまるの中に青空と白い雲が小さく小さくうつっています。

静かなお外です。

できたばかりの水たまりに、

すいっ、すいっ、ぴた。すいっ、すいっ、ぴた。アメンボさんが二匹、水面の空もようをかきわけながらすべっています。

 

おや、おや。

小さな黒い影が草むらで。

こそこそ。こそこそこそこそ。

「あっ、コオロギさん」

知らんぷりしたコオロギさんは、

草むらに消えてしまいました。

ちょっとさびしかったけど。

でも、「そうだった、ないしょね」

ムーンはパーティーメガネと

マントをはずすことにしました。

 

でもでも、つぶやくのです。

「いつ、くるのかな。

また、しょうたいじょう」

 

不思議な庭をつくりたかった

ムーン。夜のファンタジー絵本が大好き。

ほんとうにおきたはなしです。

 

 

 

 

 

 

小さな子どもはつらいことや悲しいことがあっても、いつでもファンタジーの世界に入りこむことができるのかもしれません。